ころばぬ先の不安

冬休みも終わりに近づき彼との再会の日も迫ってきた。

会ったそのときに私がペアのセーターを着ていたらどんな顔をするかなあと楽しみだったけど残念ながら彼の服装は違っていた。

待ち合わせはいつもの喫茶店でコーヒーを飲んだあとで彼は歌い始めた。

いつもの空間が戻ってきた。

私が心待ちにしていた日常だ。

冬の間は彼のバイクに乗せてもらうことはできないけど一緒に歩くことはできる。

そして、二人の仲は同級生をはじめ、お互いの知人にも知れ渡っていた。

どれほどウワサされても私は誇らしげだったし、彼もテレながらも嫌な顔はしなかった。

ただ、時おり見せる優しい表情とは裏腹に極端に喜びも表現しない点については不満と不安を覚えた。

怖いのは、お互いの卒業

その日まで2年しかない

いいえ、2年もあると言うべきなのかもしれない。

この様に一緒に過ごす時間は去年の春には、まだ夢だったのだから。

今では彼からの電話も家族は当然のように繋いでくれるし、大方は認められた仲といってもいい。

今がよければ先のことなんてと考えていたのはずっと昔

贅沢かもしれないけど、この状態が終わるのはイヤだ。

ただ、このまま彼を繋ぎとめておく術を私は知らない。

全てを投げ出す覚悟はできているけれども彼にとっては迷惑かもしれない。

甘いものの嫌いな彼に送るバレンタインはどうしようかと頭を悩ませながら、そんな思いもふとよぎった。

真冬の廊下でセーターを渡した。

出来上がったセーターを渡すその時は彼が冬休みに入って帰省をする日だった。
いつもの喫茶店で待ち合わせ、ころあいを見計らって店の外に誘い出し怪訝な顔をしている彼に「今着ているセーターを脱いで」と要求した。

暖房の無いビルの廊下は氷点下とはいわないまでも暖かくは無い。

さすがに彼も「何をしたいのか?」という表情を顔に浮かべたが、それ以上は追求せずに黙って従ってくれた。

私は紙袋から手編みのセーターを取り出し「ハイ、クリスマスプレゼント」といって黙ってそれを手渡した。

驚きながら感激する彼

嬉しそうにする表情に幸せを感じながら達成感を感じた。

そして彼は「このデザインっていつか見たのと同じだね?」と顔をほころばせながら気がついてくれた。

「そう、だからあの時セーターを選ぶときに邪魔したの・・」

彼は私の意図を理解してくれた。

すると彼は大事そうにセーターを脱ぎ始めようとしたので「そのまま着ていてと頼んだ」

もともと白いセーターを着ていたせいか店に戻っても誰も気がつかなかったけれども私は大満足していた。

彼は照れくさかったのか誰にも自慢はしなかったけれども予想はしていたので気を悪くすることも無かった。

あとは彼が帰省先から戻る前にペアルックを完成する必要があるけど2着目が簡単なのは経験上知っている。

世界に私達だけのペアのセーター

思い浮かべるだけで私の顔もほころんだに違いない・・。

一緒に歩いたら街の噂になるかもと二重の喜びに酔いしれていた。

クリスマスプレゼントは手編みのセーターにした

入院は10日ほど続いた。

彼は2日おきくらいに現れ心配そうに見守ってくれた。

さらには彼から話を聞いた彼の友人も見舞いに来てくれた。

私は退院してもすぐには学校へ行かず、数日は自宅療養、行きつけの喫茶店には登校を始めてから顔を出した。

彼は来ていなかったけれどもマスターの話では今日も出演する予定らしい。

しばらく待って彼は現れた。

いつもの笑顔で、いつもの服装

入院中にも会っていたのに何故だか久しぶりの感情が沸いた。

とうぶんの間は単車に乗せてもらったり、一緒に出かけることは控えようと思った。

正直を言うと傷がまだ痛い。

笑うこともつらいから日常にも気を使う必要があった。

彼も少しはつまらなそうだけど、もちろん理解もしてくれた。

今までほどは会えないからクリスマスには手編みのセーターをプレゼントしようと思いついた。
デザインはオリジナルで彼には内緒だけどペアルックに決めた。
ところが、そろそろ編み上がるころに彼とのデートの最中に洋品店で同じデザインを発見

自分だけのオリジナルと思い込んでいた私には少しショック、しかも彼がそれを気に入り購入しようとしたから訳も言わずに妨害した。

プレゼントするからだとは言えないしサプライズにしたかったから黙っていた。

結局彼は私の言うことを聞いて他のセーターを選ぶ事にした。

もうすぐクリスマス、喜んでもらうためには出来栄えも大切。

彼のことを思い浮かべながら毎日それを編み続けた。

そして同じセーターを着て一緒に歩く事を想像しながら・・。
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あるサテンの落書帳

彼は私の入院中でも日曜日にはいつもの喫茶店で歌っていたようだ。

このころ彼が新しく綴った詩
♪あるサテンの落書帳♪

そこには色々なことが書かれている

つらかったこと悲しかったこと恋をしたこと

数え切れないほどの出来事を

いろいろな人たちがいろいろなところで

人それぞれに感じて

そしていろいろな思いを

その中につづっている
あるサテンの落書帳

そこには色々なことが書かれている

悲しかったことさびしかったこと

死のうとしたこと

数え切れないほどの出来事を

いろいろな人たちがいろいろなところで

人それぞれの思いを

そしていろいろな人たちが

明日からもまた生きていこうとしている♪
それは正に私が過去に別れを決断して

そして、今の彼と出逢った舞台にもなった喫茶店に置いてある落書帳のことで

これまでにいったいどれだけ落書きをしてきたのか

常連客であるからには相当な数になると思う。

彼自身も歌詞のなかに綴っているように人に言えない悩みや

言葉に出しては伝えられないメッセージなど
数多くの出演者が思いを込めてきた落書帳だ!

私がそれに頻繁に書き込みをするようになったのはこの春からのことで

内容はすべて彼への思い

彼はそれに気付いているのかどうか判らないけど

彼の文字には特徴があるのですぐに判る。

文章もいつも前向きな内容が書かれているけれども

気がついていることもある。

それは本当は彼のほうが私よりも寂しがりやなんじゃないかということ。

直接その事を伝えればテレかくしに否定されると思うけど

おそらく間違い無いだろう・・。

あたたかさに付け込んだ訳ではないけど

わがままを言うことも私の気持ちの表現だった。

何度でも彼に逢うためにいくつもの口実を考えた。

あるときには勉強を教えてもらい、またあるときには友人の恋愛相談、そして買い物に同行してもらったりドライブに行きたいと誘ってみたりもした。

どんな要求にも彼は応えてくれたし決していやな顔はしなかった。

そんな彼のあたたかさに付け込んだ訳ではないけど私の要求もどんどんエスカレートしていった。

ある日の明け方くらいからなぜかおなかが痛い・・。

学校へ行くどころじゃないので近くの病院に直行した。

診断は盲腸でスグに入院、手術となった。
そこでスグに心配になったのは彼に早く知らせなくてはということだった。

傷口がいたむのもがまんして彼の下宿に電話をしたがあいにく彼はいなかった。

私はとにかく電話に出てくれた彼の先輩に事情を説明して入院先を伝えてくれるようにお願いした。
その日の夕方

彼は学校から戻るとすぐに先輩から私の伝言を聞いたらしく心配そうな顔をして見舞いに来てくれた。

病院とはいえパジャマ姿は少し恥ずかしかったけど駆けつけてくれた彼には感激!

でも、笑うと痛いし

わずかに微笑む事が出来るだけ

この日は朝から何も食べてはいなかったからお腹もすいていたし

心細かったけど

彼がいてくれれば心も強くなれる。

毎日ではないけど彼は時間を見つけてはお見舞いに来てくれた。

また、高校生を装いたかったのかどうか解らないけれども一度学生服姿で現れたのには驚き、そして気に入ってしまった。
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しばらくはこのままでいよう

見知らぬ世界への憧れと怖れを抱いたまましばらくはこのままでいよう。

数日後のデートの時、彼はそのことには触れず私もあえて聞こうとはしなかった。

このままでいてくれるなら今までどおり幸せな気分でいられる。

私は少し安心していつものように彼と会うための口実を作った。

考えた上で見つけた口実は彼にギターを教えてもらうことだった。
私がギターを弾き始めたのは高校に入学してからで部活でもギター部に入っていた。

少しだけ弾けるようになったのは グリーンスリーブスだけどまだおさえられないコードもあり彼にそのことを伝えた。

「コードって何度もくり返して憶えるほかに近道は無いよ」というのが答えだったけど本来の目的はデートだったから無理に都合をつけてもらった。

当日は市内の公園でベンチに腰かけて教わったけど、どちらかといえばそれは口実、教わる態度が悪い私に彼は言った。

「やる気あるの?」

このときはまだ甘えすぎていた私・・・つい「知らん」といってしまった。

その言葉を聴いた彼は自分のギターを片付け始めた。

「どうして?」その言葉に彼はいつに無く厳しい口調で「人に物を教わる姿勢が出来ていない」とバッサリ・・・。

当然といえば当然

彼だってヒマをもてあましてこんなことをしているわけではない、自分の態度を反省して涙目で謝ったがこんな時すぐに微笑んで許してくれるのも彼のやさしさだった。

身勝手な話しだけれど

これまで以上に私は彼に甘え始めた。

どこへ行くにも一緒に付いていったしもっと電話をしてくれるようにせがんだ。

彼の友人たちにも付き合っているということをアピールしたし、そんな私に困惑しながらも彼は優しい。

もっと2人の仲を深めるために一緒に歩く時には腕を組んで歩いた。

そういう2人の姿は街中でも目立っていたらしい・・・。

どこからウワサが聞えたのか両親の耳にも入っていた。

これまでのように幼いかわいらしい付き合いではなく少し背伸びしながらでも大人に近づいた恋であることは両親にも知られていた。

ある日そのことを両親から聞かれて釘をさされた。

「お前のことを信用していない訳ではないけれども、うちの娘がまさか・・・。」ということは良くある話だからという内容だった。

少しうるさいとは思いながらもわが子にまるで関心のない親ではないことを誇りに思った。

いま思うと身勝手な話しだけれど私はそのことを彼に手紙で伝えた。

「私は両親に話せないようなことは何もしていませんと伝えました。」

「だからとうぶんの間私にそのような要求をしないで下さい。」

「大好きなあなたならわかってくれるよね。」

彼からの返事は怖かった。

いつでも一緒にいたいといいながら体は要求しないでというのは彼の年齢を考えても都合のいいことかもしれない。

いや、私の同級生にもすでに経験した人は何人もいるし正直な気持ちは私も彼と早くそういうつながりを持ちたい。

もっともっと身近で深い関係になりたい、決して興味本位ではなく二人の関係を確実なものにするために。

もちろん怖さもある。

カマをかけて

彼が私を自分の彼女と認めてくれるまではこの不安はずうっと尽きない。

私はカマをかけて言ってみた・・・イベントには女の人も沢山来るんでしょう?

そんな私の気持ちを見透かすかのように彼がポツンとひと言 「うん、新しい出会いが見つかるかなあ」

本心はわからない、あるいは私をからかっているのかも知れないけど大きな声で「ダメッ」とだけ釘をさした。

もちろん私にそんな権利はないけど。

彼が働くバイト先を私は何度も覗いてみた。

子供っぽい行為かもしれないし立て分が出来ていないことも少し理解していた。

でも、会えるときには会いたいし出来るだけ一緒にいる時間を作りたかった。

彼の作業服姿、普段とは違って見えた。

将来はどんな仕事を希望しているんだろう?卒業したらどんなところで働くんだろう?

考えれば考えるほど不安になったり悲しくなったり。

どうしてこんなに好きになってしまったんだろう?

そんな不安な日をすごしていると思いがけなく2人の間は進展した。

いつもの喫茶店で何気ない会話を交わしていた時、いつの間にか仲良くなった田谷さんと理子が口げんかを始めた。

彼はたしなむように「何やってんだよ俺たちみたいに仲良くしろよ!」と声をかけているのを聞いて

「俺たちみたいに」というのは私と彼との事をいっているのだ、私たちは付き合っていると認識してもいいんだと解釈してとても嬉しくなった。
もちろん彼にそれを確かめたわけではない。

でも何度も一緒に出かけたり私が催促して買い物に付き合ってもらったり時には悩みを打ち明けたり勉強も教えてもらった。

好きだとか愛してるとかそういう言葉も聞いてみたいけど私の思いも確実に届いていることを実感してこれまで以上に彼を身近に感じた。
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誕生日にもらったぬいぐるみ

彼が自分の友人に私を紹介してくれるときのせりふはいつも「俺の妹」だった。

大学2年の彼にしてみれば高1の私を彼女として紹介するのは恥ずかしいのかな?

それとも本当に妹くらいにしか感じていないのかな?

聞いて確かめたい気持ちはあってもそこに踏み込んで彼とのつながりが壊れてしまうことを怖れた。

焦らないでゆっくりと二人の仲を深めようとする気持ちと早く決定的な仲になりたいという気持ちが交差した。

夏の初めに私は16歳の誕生日を迎えた。

彼には事前にそっとそのことを告げると大きな縫いぐるみをプレゼントしてくれた。
後でわかったことだけどずいぶんお金も使わせたみたいで少しすまない気もしたし、ここまで気を使ってくれたことが嬉しくもなった。

彼の誕生日は来年の3月、ありったけの気持ちを贈ろうと思う。

プレゼントを考えるのも楽しみのひとつ・・・。

高校に入って最初の夏休みが来た。

彼は田舎に戻らずしばらくアルバイトをするようだ。

場所は私の家からも近い電気工事の会社、ギターを弾いて歌っている姿からは仕事中のことが想像できない。

彼の休みは日曜日だけ、でもその日は彼の歌声を聞いていられる。
夏休みの途中彼の所属する市内の音楽協会の大きなイベントが隣の県のキャンプ場で開かれると聞いていた。

私も誘われたけど2泊3日では両親の許可がもらえないので残念だけど断らざるを得なかった。

でもここでも心配事が有る。

そういうイベントの場所では誰もが開放感にひたり大胆になるので彼に言い寄る人もいるだろうということ。

あるいは彼がそういう気持ちにならないとも限らない。

彼女とは思われていなかったあの日

一緒に歩きながらポツンと聞かされた話しは去年の学校祭で知り合って少しだけ付き合った女の人

・・・どうして彼の良さがわからなかったのだろう?でもその人がいないおかげで彼とこうしていられる。

もちろん彼は私と出会う前にも数人付き合った相手がいるとは聞かされていた。

どのような関係だったのかはわからないけど興味は会った・・・いや気になっていた。

今でも私は彼にとってどのような存在でこれからもどのような関係になっていくのかはわからない

でも今は幸せな気持ちのまま。

彼から昔の話を聞かされるたびに私の心は穏やかではなかった。

どこかに心残りがあるのだろうか?

あるいは昔の彼女と比べられているのだろうか?

いずれにしても明るい気持ちにはならなかった、興味はあったけど。

学校の中を案内されながらいろいろなコーナーをまわって彼の友人が展示しているものや屋台でのお食事、コンピュータールームでは二人の相性診断をしてもらった。

どうやら相性は悪くないみたい。

彼にもアピールできたかな?

およそ2時間ほど学校の中を歩き回ったところで彼の友人が二人の写真を撮ってくれた。

その後、彼の友人の小野さんは二人の写真を引き伸ばしてパネルにまでして学校に持ち込みみんなに公開したようだ。
彼はしきりに照れていたけど私にしてみれば思わぬ収穫、彼に虫がつきませんように。
学校祭では彼の同級生の数十人に紹介されたけど「自分の彼女」とは言われていないのが少し残念だった。

私だって彼の前では綺麗になりたい女の子のひとりなのに・・